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介護現場10年が実践する、AIに”書かせない”AI活用法

「ChatGPTで研修資料を作ったら、なんとなく違和感があった」

そんな経験、介護現場で働くあなたにもありませんか?

文章としては整っている。誤字もない。論理も通っている。それなのに、自分の発表として読み返すと、どこか他人事のように感じる——。

私は介護の現場で10年、現在は重度訪問介護のリーダーとして月例の発表も担当しています。1年ほど前から、その準備にChatGPT、Claude、GeminiといったAIを使い始めました。結論から言うと、AIは介護職の強力な相棒になります。ただし、「AIに書かせる」のではなく「AIを下書きにする」という使い方を選んだ場合に限ります。

この記事では、現役の介護福祉士として実践している、私なりのAI活用との付き合い方をお伝えします。

【第1章】介護現場でAIに任せきりにする落とし穴

介護現場でも、ChatGPTやClaudeなどの生成AIが急速に広まっています。研修資料、申し送り文、月例発表、議事録——文章を扱う場面なら、どこでもAIが顔を出すようになりました。

私自身、最初は「これは便利だ」と素直に感動しました。

2〜3分の月例発表の準備に、以前は1時間以上かかっていました。テーマを考え、構成を組み、文章を書いて、推敲する。その一連の流れに、AIを使えば数分で「下書き」が手に入るのです。

ところが、しばらく使い続けて気づいたことがあります。

AIが書いた文章は、整っている。でも、自分の発表ではない。

職員の前に立って話すとき、その文章を読み上げても、なぜか説得力が出ない。それもそのはず、私自身がその文章を「考えて」書いたわけではないからです。AIが選んだ言葉、AIが組み立てた論理、AIが想定した読者像——それらは、私の事業所、私の同僚、私の利用者を知らない誰かが書いたものでした。

さらに、もう一つ気づいたことがあります。

AIに「介護の最新情報」を聞いて出てきた回答に、改定前の古い情報がもっともらしく混ざっていたことが何度かありました。Google検索で念のため確認していたから気づけましたが、そのまま使っていたら、職員に間違った情報を伝えるところでした。

ここから私は、AIの使い方を根本的に変えました。

AIに書かせるのではなく、AIを下書きにする」——次の章で、その具体的なワークフローをお伝えします。

【第2章】介護職が実践する”AIに書かせない”5ステップワークフロー

「AIを下書きにする」と言うと抽象的に聞こえるかもしれません。私が実際にやっている5ステップワークフローを、月例発表の準備を例に説明します。

ステップ① AIにテーマ候補を相談する

まず、その月の発表テーマをAIと相談します。最近の現場の出来事や季節要因を伝えて、候補をいくつか出してもらう

具体的なプロンプト例:

「重度訪問介護の現場で働く職員10名向けの月例発表のテーマ候補を5つ出してください。最近の現場で気になっているのは○○です。」

AIが出してきた候補から、自分が話したいものを選びます。AIに決めさせない。選ぶのは自分です。

ステップ② AIに”骨子”だけを出させる

テーマが決まったら、構成の骨子をAIに出してもらいます。

具体的なプロンプト例:

「『○○』というテーマで、短時間で話す発表の骨子を作ってください。導入・本論・まとめの3パートで、各パートのポイントを箇条書きで出してください。」

このとき重要なのは、本文を書かせないこと。骨子だけです。文章はまだAIに書かせません。

ステップ③ 骨子を自分の現場に当てはめて修正する

AIが出した骨子は、抽象的すぎて職員に響かないことがほとんどです。これを自分の事業所、自分の同僚、自分の利用者に合わせて修正します。

実際にあった例で説明します。

ある月、職員間のケア手順の統一について発表した時のことです。重度訪問介護では、1人の利用者を複数の支援員が交代で担当します。だからこそ、支援員によってケアのやり方がバラバラだと、利用者にとって大きなストレスになります。これは現場の永遠のテーマです。

このテーマでAIに骨子を出させたところ、「職員間で情報を共有し、共通認識を持つことが重要」と書かれていました。

これ、間違っていません。でも、このまま職員に話しても、おそらく誰の心にも残らない。介護職員なら誰でも知っている一般論だからです。

そこで私は、ある利用者のケース(仮にXさん)を入れて書き直しました。個人名は伏せ、場面だけを切り出して、「Xさんへの○○の場面で、職員Aさんはこのやり方、職員Bさんはこのやり方をしている。Xさんの表情を見ると、明らかにこちらのやり方の方が落ち着いている。だから、こう統一していこう」という具体的な提案に変えたのです。

これだけで、発表は自分の現場の話になります。

発表したその場では、職員から目立った反応はありませんでした。ですが、後日少しずつ現場を見ていると、ケアの細かい動きが揃ってきている実感がありました。これが、現実のケア手順統一の進み方なんだと思います。

ステップ④ 自分の言葉で本文を書く

骨子と具体例が固まったら、本文は自分で書きます。AIには、調べごとや言い換えの相談相手として使うだけ。

たとえば「もっと柔らかい表現にしたい」「専門用語を平易に言い換えたい」といったときに、AIに複数案を出させて、自分が一番しっくりくるものを選ぶ。

ステップ⑤ 必ずGoogle検索で裏取りする

最後に、AIが出した情報のうち事実に関わる部分は、必ずGoogle検索で確認します。これは絶対に省略しません

理由は——AIは改定前の古い情報を、最新のもののように混ぜて出してくることがあるからです。私自身、何度かそういう経験をしました。

詳しい話は、次の章でお伝えします。

このワークフローで得られた変化

このやり方に変えてから、月例発表の準備時間は1時間以上から数分まで短縮できました。ただし、誤解してほしくないのは——短縮できたのは時間だけではないということです。

一番の変化は、当日の状況に応じて柔軟に対応できるようになったことです。

月例研修の発表時間は、その日の参加人数や進行状況によって、2分のこともあれば3分のこともあります

以前、AIが書いた文章をそのまま読み上げていた頃は、時間が押したり、逆に余ったりして調整できませんでした。AIの文章は「自分の言葉」ではないため、その場で削ったり、足したりする余裕がないんです。

リライトして自分の言葉にしたことで、話しながら「ここは省略して、ここは少し詳しく」と現場で調整できるようになりました。結果、その日の枠にきちんと収まるようになったのです。

これは、AI使用前の「自分で全部書いていた頃」よりも、むしろ発表の質が上がった実感です。

【第3章】介護現場でリライトが必要な5つの理由

ここまで読んで、こう思った方もいるかもしれません。

「結局リライトするなら、最初から自分で書いた方が早いのでは?」

正直に言うと、慣れないうちは確かにそう感じます。それでも私が「AIを下書きにしてリライトする」というやり方を続けているのには、5つの理由があります。

理由① AIは”古い情報”を最新のように混ぜてくる

第1章でも触れましたが、これが一番怖い理由です。

私自身、AIに介護関連の情報を聞いた時、改定前の古い情報がもっともらしく混ざっていた経験が何度かあります。具体的な数字や制度名まで自信たっぷりに答えてくるので、知識のない人ならそのまま信じてしまうでしょう。

介護保険は3年に1度の改定があり、加算や報酬は毎年のように微修正が入ります。AIが学習しているデータにはカットオフ日(学習データの最終収集日)があるため、最新の改定情報が反映されていないことがあるのです。

これはAIの仕組み上、避けようのない弱点です。だからこそ、AIの出力をそのまま使わず、必ず自分でリライトしながら事実確認の目線を入れる必要があります。

理由② AIは”介護現場の温度感”を知らない

AIは膨大なテキストデータから学習していますが、現場で利用者と過ごした時間は持っていません。

  • 利用者の体調がほんの少し変わる兆候
  • 職員が夜勤明けで疲弊している現実
  • 家族が抱える複雑な感情
  • 事業所ごとに違う暗黙のルール

これらは現場で働いた人間にしか分からない感覚です。AIが書いた文章には、この温度感がありません。きれいに整っているけれど、どこか他人事に読めてしまうのは、これが理由です。

理由③ AIの文章は”誰にでも当てはまる”

AIが出してくる文章は、基本的に最大公約数です。「介護職員一般」に向けた、間違いではないが当たり障りのない内容になります。

ところが、職員に向けて月例発表をする時、本当に伝えたいのは「うちの事業所、うちの利用者、うちの職員」に向けたメッセージです。

たとえば「丁寧な介助が大切」という一般論を伝えても、職員は「それはもう知ってる」で終わってしまいます。「自分が担当している利用者で、ある工夫が効いた具体的な場面」を語って初めて、職員の中で自分の現場に置き換える思考が始まるのです。

リライトとは、この「最大公約数を、自分の現場に翻訳する作業」です。

理由④ 自分の言葉でないと、自分の発表にならない

第2章でも触れた理由ですが、もう少し補足します。

AIが書いた文章をそのまま読み上げると、話すリズムが合いません。自分が考えて選んだ言葉ではないので、抑揚も間も自然に作れない。結果、発表が上滑りする感覚が出ます。

リライトして自分の言葉に直すと、話しているうちに「次にこう言いたい」という流れが自然に湧いてきます。これは自分の脳で組み立てた文章だからこそ起きる現象です。

理由⑤ リライトすることで、自分も学ぶ

これは正直、リライトを続けてみて初めて気づいたことです。

AIが出した骨子に対して、「うちの現場ならこう違うな」「この一般論には、こんなケースが当てはまるな」と考える時間——それは、自分の中にある介護職としての経験を、改めて言語化する時間になっています。

たとえば、AIが「丁寧な介助が大切」と書いてきたとします。私はそれを読んで、自分の中の引き出しを開けます。「あの利用者さんに、こういう介助の工夫が効いたのはなぜだったか」「逆に、教科書通りの介助では足りなかった場面はどんな時だったか」——10年の現場経験が、AIの一般論を触媒にして、整理されていくのです。

不思議なことに、AIに任せきりで書いた発表の内容は、発表が終わるとすぐ忘れます。でも、リライトしながら自分の経験を引き出した発表は、後になってもしっかり覚えている。発表のテーマに対する理解も、なんとなく深まっている実感があります。

AIを使うと自分の頭が退化するのではないか——そんな不安を持つ介護職の方も多いと思います。私もそう思っていました。

ですが、リライトを前提にAIを使うやり方を選んだ場合、結果は逆になります。AIは答えを出してくれる道具ではなく、自分の中の経験を引き出すための問いかけになるのです。

【第4章】介護職のための”AIとの距離感”3つの実用指針

ここまで「リライトが必要」と語ってきましたが、では具体的にどうAIを使い分ければいいのか。介護現場で実践している3つの実用指針をお伝えします。

指針① 複数のAIを使い分ける(ChatGPT/Claude/Gemini)

私は今、ChatGPT・Claude・Geminiの3つを場面に応じて使い分けています。同じ質問をしても、それぞれ違う答えを返してくることがよくあるからです。

特に介護や医療に関する内容については、肌感覚でClaudeの方がなんとなく正確な印象があります。とはいえ、これは私の経験則であって、絶対的な評価ではありません。AIツールは日々進化しているので、半年後には逆転している可能性もあります。

大事なのは、1つのAIだけを信じないこと。複数のAIに同じ質問を投げて、答えが食い違う部分は「ここは怪しい」と疑う材料にする。これだけで、ハルシネーションに引っかかるリスクが大きく下がります。

指針② 介護保険・医療情報は公式ソースを必ず併用する

介護保険制度、加算要件、医療的ケアの安全手順——こうした事実が決まっている領域については、AIだけに頼ってはいけません。

私が併用しているのは、以下の3つです:

  • WAM NET(独立行政法人福祉医療機構の運営する情報サイト)
  • 厚生労働省の通知文書
  • 自治体の介護保険担当課の公式サイト

AIに概要を聞いた後、これらの公式ソースで裏を取る。この一手間を惜しむと、改定前の古い情報を職員に伝えてしまうリスクがあります。

指針③ Google検索を”検証ツール”として使う

これが一番手軽で、それでいて効果的な習慣です。

AIが出してきた情報のうち、事実に関わる部分(数字、固有名詞、制度名、年月日など)は、Google検索で1分でも確認する。

完璧でなくていいんです。「この情報、本当かな?」と検索する習慣があるだけで、致命的な間違いはほぼ防げます。

私自身、AIが出してきた情報をそのまま使ってしまっていたら、職員に間違った情報を伝えていた経験が何度かあります。Google検索の習慣が、それを防いでくれました。

【まとめ】AIは”答え”ではなく”問いかけ”

ここまで、私が現役の介護福祉士として実践している「AIに書かせない」AI活用法をお伝えしてきました。

5つのステップで使い、5つの理由でリライトし、3つの指針で距離を取る——文字にすると複雑に見えますが、本質はとてもシンプルです。

AIは、私たち介護職に答えを出してくれる道具ではない。
自分の中にある10年分の経験を、引き出してくれる問いかけだ。

そう捉え直した瞬間から、AIは敵でも脅威でもなく、現場で利用者と向き合ってきた介護職の、もっとも頼れる相棒になります。

職員の前で発表する時、利用者のケースを記録する時、研修資料を作る時——あなたが選ぶ言葉は、あなたしか持っていない経験から生まれた言葉であってほしい。

その言葉を、AIに渡してはいけません。

🔍 もっと深く知りたい方へ

「AIに書かせない」やり方は分かったけれど、具体的にAIがどんな”嘘”をつくのか——その正体について、より深く扱う記事も準備しています。

介護現場×AIの実践的なノウハウは、今後も継続的にお届けします。
最新記事は、▶ AIナビゲーションラボのトップページ からご確認ください。


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介護福祉士・重度訪問介護支援員。
介護の現場で10年従事し、現在は重度訪問介護のリーダーとして勤務。喀痰吸引等の医療的ケアにも対応。
傍らでt.designstudio・AIナビゲーションラボを運営し、介護現場×AIの実践的活用を発信中。

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